地球で遊び、学ぶということ~地球をキャンパスに学んだ私が「考え方を、考える」~

皆さんこんにちは。ピースボートセンターおおさかの野々村修平です。

大阪には3度目の緊急事態宣言が発出されました。私は、「時間の使い方」次第でこれからの人生に大きな「差」が生まれると思っています。この時間を「何もせず退屈な毎日を過ごす人」と「新しいことを学ぼうと前に進める人」。今の時点で前者の人は、新年度の目標をもう一度考え直すことをお勧めします。

そこから逆算すれば今やるべきことが見えてくるはず。まだ4月!間に合います。重要なことは、始めるタイミングに「遅い」は存在しないということです。

最近、ピースボートセンターでは世界の教育や環境問題等を学んでみたいと話してくれるボランティアスタッフが増えてきた印象があります。私には、世界を自分の目で見て学び経験したからこそ得られた、考え方があります。今回はそのような「考え方を、考える」をテーマにブログを書いていきます。特に、世界一周のテーマが「教育」や「学び」である人にとって参考になれば幸いです。

地球一周で得られる「学び」とは

世界は今、激しく変化しています。世界は格差や気象変動、持続可能な消費や生産など地球規模で解決すべき多くの課題を抱えています。こうした先を見通すことが困難な時代にあってなお、社会変革を実現していくためには、変化を受容し異文化を理解・尊重しながら新しい価値を創造していく必要があります。

海外に身をおくことは、そのための一つの有効な手段です。特に若い時期の海外経験は、将来の可能性や選択肢を広げ、また多様な人々との関りの中で海外から日本を客観的に眺めることは、広い視野と俯瞰的な視点を身に付ける絶好の機会になります。

ピースボートでは世界を旅するからこそ見えてくる「地球規模で考える」という、視野を身につけることができます。

洋上で私が実践していた「考え方」

講演会やワークショップ、継続して行われる教育プログラムなど、ピースボートには多くの学ぶ機会があり、自分が好きなだけ参加することができます。私自身が初めて乗船した時に感じましたが、洋上では目まぐるしく様々な体験が襲いかかってきました。

時には事前に備えていても、自分の気持ちを言語化できなくなったり、思考が停止してしまうことがあります。誰かの意見を聞く機会も増えるかと思いますが、結果として自分の意思で答えを導き出さなければいけません。

私がそのような船旅や普段から「学ぶ」ことにおいて大切にしていることは、以下の3つです。

●ナラティブシンキング(Narrative Thinking)
●クリティカルシンキング (Critical Thinking)
●グローバルシンキング (Global Thinking)

ナラティブシンキング(Narrative Thinking)

「Narrative」を日本語にすると「物語」です。学びたいものに対して、背景にはどのようなものがあり、どのような作用を果たしているのか、これらの文脈を読み解き本質を理解しようとする考え方です。

例えば、私は自分の思考が乱れていると感じた時は美術館に行きます。私は、アンドレ・ドラン (André Derain)やピエール=オーギュスト・ルノワール (Pierre-Auguste Renoir)の作品が好みですが、それには私なりの理由があります。

人は、今まで歩んできた人生の中で、「好き」という価値観ができあがるものです。作品の色づかいや表情に目が行くのか、絵の具が好きなのか、それとも油絵が好きなのか? なぜその作品が好きであるかの文脈を読みとくことで、自分自身を客観視することができるようになります。

例えば、自然を表現する作品に心惹かれるのであれば、心に余裕がないのかもしれません。繊細な色使いの作品に頻繁に目が向くのであれば、細かい作業が好きな性格を表しているのかもしれません。身近な生活の中でも同じことが言えます。例えば「あなたの着ている服は誰が作ったのでしょうか?」

目の前の体験をそのまま受容するだけでなく、文脈を読み解くことで新しい発見をすることができます。

クリティカルシンキング (Critical Thinking)

「批判的思考法」とも呼ばれています。人間は、ある事象から答えを導き出す時、自分の経験値の中から答えを定義してしまいます。つまり都合の良い解釈をし、自分勝手に納得していることを意味します。これを別の角度から見てみようということがクリティカルシンキングです。

簡単な例を挙げると、「子どもが発する言葉」に注目してみましょう。子どもと大人はまるで、物ごとの捉え方が異なります。子どもは、「なぜ?」「どのように?」という言葉をよく使いますね。私が電車に乗っている時、前の席に座っている子どもが母親に向かってこのように言いました。「なんで空は青いの?」

多くの人は、空は青色となんとなく決めつけています。これは自分勝手な解釈です。理由も考えずに「空は青いものなんだよ」と答えていては、子どもは納得しないでしょう。もちろん太陽の白色光や散乱について科学の予備知識を持っていれば「夕焼けが赤い理由」までも伝えることができますね。この答えを知らなくても自身の経験と、多角的な角度から推察できる力が求められています。

そもそも正しい回答を述べることよりも、物事に疑問を持ち、思い込みのスイッチを外し「なぜ?」と考えることがなによりも大切です。

グローバルシンキング (Global Thinking)

「global」は「地球規模の」という意味です。ピースボートのクルーズでは、約100日間の航海で本質的なグローバル思考を養うことができます。

留学やワーホリであれば1ヵ国に滞在することで、その国の文化に強く触れることが可能です。それらと敢えて差別化すれば、ピースボートの船旅は、5大陸と7つの海を駆け巡りながら20ヵ国程度を旅していきます。この経験は、世界を自分ごとに置き換えて考えられるようになる絶好のチャンスです。地球を一周することで本当のグローバル思考を身に付けることができると思っています。

情報に頼らず、まず考えることを習慣化させる

人工知能(AI)やビックデータ、Internet of Things(IoT)等の先端技術の急速な高度化は、国内外の産業構造や私たちの生活環境に大きな影響を及ぼしつつあります。つまり、現代には情報が溢れています。

ある事象について考えようとした時、まずは自分の頭を使って考えることを習慣にしてください。iPhoneからGoogle検索すれば、ありとあらゆる情報を秒速で取得することができますが、知識を深める際はまず自分の結論を導きだし、情報をもとに検証していくことが重要です。

「情報を取得→思考」から「思考→情報で検証」の順番で考えることで、自分の意見を持って物ごとを判断できるようになります。

ピースボートでは、この思考法を強制的に行うことができます。では、なぜ船ではこの状況が生まれるのでしょうか?早速、頭の中で「なぜ?」と疑問を持ちましょう。

洋上ではインターネットの使用が制限されるからです。電波は、①金属を通り抜けられず、反射してしまう、②発信元の基地局から離れれば離れるほど弱くなる、という特性があります。船は金属であり、太平洋のど真ん中まで進むと周辺には発信元の基地局が存在しなくなります。すなわち電波が届きにくくなるため、情報を容易に取得できない状況が自然と生まれます。

このような状況で思考を検証する方法は、人との対話に他なりません。人との対話はとても重要で日常でもできることです。だから、日頃から自分の意見を主張できる機会を逃さないようにしてくださいね。

学ぶことの意義

私は元々、教育機関で働いていたので「学ぶことの意義」を問われることが多くありました。ドイツの神学者、マルティン・ルター (Martin Luthe)はこのように述べています。

「明日世界が終わりを迎えるとしても、私は今日りんごの木を植える」

明日、本当に世界が終焉を迎えるのであれば、りんごの木を植えることは無意味でしょう。「例え意味がなくても、今の自分にとって意義のあることを私はやる」ということがルターの言いたいことだと私は解釈しています。とても哲学的な考え方です。

私は、世界が終わりを迎えるとしても「続けたいこと」が見つかっている人生を素敵だと感じます。そのようなものを見つけることが、私なりの「学ぶことの意義」です。机に向かってテキストやノートを広げるだけが勉強ではありません。

船旅の100日間だけ、地球がキャンパスになるのではなく、もう私たちは地球というキャンパスの上を歩き始めています。私たちは、いつでもどのような場所でも「学ぶこと」を始められますよ。

 

ピースボート 野々村修平