サントリーニ島のロバタクシーは持続可能?

【SDGsとピースボートとわたし】動物を保護しながら人間との共存を続けられる社会をつくるために必要なこと

【SDGsとピースボートとわたし】シリーズ

ピースボートは、国連との特別協議資格を持つNGOとして、国連「持続可能な開発目標 (以下SDGs)」の達成を目指すさまざまなプロジェクトに取り組んでいます。そして、わたしたち一人ひとりの行動もSDGsを意識することで、よりよい世界をつくることにつながっています。ピースボートスタッフが考える、それぞれの「SDGsとピースボートとわたし」の関係を紹介します。

こんにちは。ピースボートスタッフの山口優樹(通称:グレー)です。SDGsという言葉を最近はテレビや広告でも目にする機会がとても多いと思います。ご存じの方も多いと思いますが、SDGsと書いてエスディージーズと読みます。これは国連が定めた「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称です。

僕がSDGsのロゴをはじめて見たのは、ピースボート地球一周の船旅の出航式でした。ピースボートの船にペイントされたSDGsロゴを目にした時は、何かのイベントのコラボデザインかな?ぐらいにしか思いませんでした。ですが船に乗って船内企画を通してこのロゴの意味を知りました。ピースボートはSDGsの公式キャンペーン船に認定されていて、世界中をめぐりながらSDGsをアピールしています。

<ピースボートの船体に描かれたSDGsロゴ>

最近は、街中でもSDGsロゴを多く目にするようになりました。これはカラーバス効果と呼ばれていて、人間は自分にとって興味のないものは視界に入っても情報として受け取りません。 逆に関心のあるものだけを受け取る仕組みになっています。つまり自分の興味関心というフィルターを通して世の中を見て情報を処理しているわけです。ポスターも存在を知ると色々な所に貼ってあると気づくのと一緒ですね。

それにしても今では、多くのサラリーマンや国会議員などがこのSDGsのバッジを付けてアピールしていて、一大SDGsブームとなっていますが、彼らが全員SDGsの意味を正しく理解しているのでしょうか?それともファッションの1つとしてもてはやされているだけなのでしょうか?

僕は、2019年の春に出航した第101回ピースボート地球一周の船旅に乗船しました。今日はその時訪れたギリシャで感じたことを綴りたいと思います。

サントリーニ島のロバから見たSDGs

ここはエーゲ海に浮かぶギリシャのサントリーニ島です。

サントリーニ島には大きな港がないので船を沖合に泊め、小型のテンダーボートに乗り換えて港に向かいます。20万年前の火山の噴火によってできた断崖絶壁の上にそびえ建つ青と白のコントラストが綺麗な街並み。崖の上のフィラの町まで行くには2つの手段があります。1つはケーブルカーともう1つはロバの背中に乗って運んでもらう方法です。

島へ上陸するとすぐにロバタクシーの受付所があります。ロバタクシーはサントリーニ島で有名なアクティビティの1つで僕も行く前からとても楽しみにしていました。

元々サントリーニ島は急斜面が多く、車が通行できない程せまい道があり、収穫したブドウを運搬するために足腰の強いロバが輸送手段や交通手段として活躍し、共存してきた文化があります。その文化を継承しロバ達を守るために、観光客から資金を得てロバの楽園として保護活動が行われているという側面もあるそうです。

港や町の露店でもロバのキャラクターのお土産がたくさん売られており、この地に強くロバ文化が根付いていることが分かります。

受付所で料金を支払うと体格にあったロバを選んで乗せてもらえます。ロバもしっかりと調教されているので600段ともいわれる石畳の階段を進んでいきます。

傾斜もあるので中腹まで来るとさすがにロバもきついのか、途中で立ち止まっては休憩しながらゆっくりと上がっていきます。行きの登りよりも帰りの下りの方がロバの膝に負担がかかると聞いて、帰りはケーブルカーを選びました。

実際ロバの背中に乗ると風がとてもさわやかに感じ、ロバに付けられた鈴の音が鳴るたびに異国情緒漂います。崖に築かれた階段を上がっていくので眺めもとても良く、エーゲ海がよく見渡せピースボートの船も沖合に泊まっているのが見えます。

<左上に写っている白い船がピースボート>

ロバタクシーはサントリーニ島の観光資源の1つになっているのですが、ピースボートスタッフの中でも動物福祉の観点からあまりお勧めしないという声もあります。近年では体格の大きな欧米人観光客の増加により、膝や背骨を損傷するロバが相次いでいます。そのためロバの体重の5分の1までしか載せないように制限する法律ができましたが、動物保護団体は、制限以上ある体重の観光客を乗せている業者もいることを報告しています。

一部のロバは十分な休息や水分を与えられずに働かされているというニュースもありました。またロバを強くするために品種改良が進んでいるというニュースも耳にします。そんな状況のなか、ギリシャ政府に対して、ロバを過酷な状況で働かせることをやめるよう働きかけもおこなわれています。

人間のエゴによって動物達が苦しんでいるのならば、それはSDGsに反しているし、これからの持続可能な社会においては時代遅れだと思います。先にも書きましたが、サントリーニ島ではこれまで長い間、人間とロバが共存してきました。その伝統を守りながらもロバに負担をかけない道を模索してほしいです。

 

ピースボートスタッフ 山口優樹