こんにちは。ピースボートスタッフの野々村修平です。6月16~17日に「災害ボランティア・リーダートレーニング」というセミナーが大阪で開催されます。災害ボランティアリーダーは災害がおこった際、個人単位のボランティアを束ねて緊急・復旧支援を行ない、また地元住民と個人単位のボランティアをつなぐ重要な役割もつとめます。

私は、昨年の8月に「九州北部豪雨」で甚大な被害を受けた、福岡県の東峰村で約40日間、災害ボランティアリーダーとして活動を行いました。忘れてはいけない想いを、本日は綴りたいと思います。私の経験から多くの方に災害ボランティアリーダーの必要性を知ってもらい、このプログラムの受講に繋がることを願っています。

豪雨に襲われた東峰村

福岡県朝倉郡にある東峰村、人口は2,200人程度の小さな村。
福岡県下で一番の高齢化が進む「過疎の村」と呼ばれ、高齢化率は、40%を越えている。

2017年7月6日、朝倉市付近で観測された午前0時までの24時間雨量は、約1,000㎜に到達。
3時間の降雨量は約400㎜を越えていた。
2014年の広島土砂災害(約250㎜)や2015年の関東・東北豪雨(約200㎜)を大幅に上回り、
記録的な大雨が短い時間に集中して観測された。

この記録的な大雨により、
福岡・大分県の両県では、死者37名、行方不明者4名の犠牲者が出た。
また人的被害のほか、多くの家屋の全半壊や床上浸水などの甚大な被害を生み出した。
豪雨の発生直後には、2,000名を超える避難対象者が出ることになった。

土砂崩れで潰された家屋。大きな岩が散乱しているが、この周辺は歩道であった。

 

「豪雨」と聞いても、正直多くの方の記憶には残っていないのではないでしょうか?本音を言うと、被災地を自分の目で見なければ、私自身も他人ごとのように、耳を傾けていなかったのかもしれません。

しかし、あまり注目されない「豪雨」の被害ですが、この一帯の朝倉郡は約1年が経過した現在も支援活動が継続しています。この事実を多くの人に知って頂きたいと、素直に感じます。

歩道が土砂の影響で崩落している。

海の上で被災地を知る

「九州北部豪雨」が発災した時、私は海の上でした。私が乗船していた、ピースボート第94回地球一周クルーズが中南米付近を航海していた頃だと思います。洋上の乗船者の多くは、インターネット回線を繋いでいません。そのため、この災害を知る由もありません。

7月12日、船がハワイに入港した際、ピースボート災害ボランティアセンター(以下PBV)職員の辛嶋友香里さんが乗船しました。そして、辛嶋さんの講演の中で初めて「九州北部豪雨」という言葉を知ることになります。

洋上で九州北部豪雨について講演する辛嶋さん。


私が日本を離れている間に、このような大きな災害が起こっていたという事実。それ以上に、「今の自分には何もできない」という苦しさを感じたことを覚えています。たった1人の人間に何ができるんだろう。でも辛嶋さんの話を聞き、PBVの活動を知って、帰国したらすぐに被災地に行こうと決めました。

「苦しんでいる人がいるのなら、真っすぐに向かっていきなさい」

小さい時、誰かにそう言われたことが印象に残っています。

「なぜ、ボランティアをするの?」

そのように問われることもあります。私はいままで、人生の中でたくさんの方に出会い助けてもらいました。

ひとりひとりに恩返しはできません。

でも、これから出会う人に、私が頂いてきた分の恩を送ることはできます。だから、私はボランティアを続けているんのだと思います。

そのような「小さな理由」では、いけませんか?

ボランティアを束ねる、ボランティアリーダー

地球一周から日本に帰ってきて、3日後には東峰村に到着していました。友人におみやげを渡すこともせず、世界一周の体験談も伝えず、バックパックと片道航空券をもって駆けていました。

私が被災地を訪れたときに掲げていた目標、それは、「1つの村が復興するまで残り続ける」ということです。



地球一周クルーズ中にPBVが主催している「災害ボランティア・リーダートレーニング」を受講していたこともあり、一般ボランティアを束ねるボランティアリーダーという立場で被災地支援に関わりました。

災害ボランティアリーダーとは?

災害ボランティアリーダーは、被災地・被災者を中心に考え、全国から集う個人単位のボランティアとともに、緊急・復旧支援活動に取り組みます。そのための基礎知識を有しており、地元住民の方たちや支援団体とコミュニケーションをとりながら、安全に配慮して支援活動を行うことができます。

また、刻一刻と変化する被災地の状況を的確に把握し、必要なことは何かを判断していきます。その上で、ボランティアたちが持っているポテンシャルを最大限に発揮できるよう、状況説明や環境整備をおこないます。

被災地は、常に周囲の環境に配慮しなければいけません。何度も避難指示が出る中で、自身とチームの安全を最優先に活動をしていきます。

床下の土砂だしを行う直前、チームでミーティングを行う。

現場でのリーダーの役割

私が経験したリーダーが行う役割の一例は、以下のようなものです。

・活動前に住民さんのご自宅に訪問し、状況の確認・活動の選定
・チームの統制、チームの把握
・休憩時間の配分
・安全の配慮
・住民さんとのコミュニケーション
・ボランティアセンターとの連絡、調整
・必要機材の貸し出し依頼
・報告書の作成

床下での作業。床下は、大人の体が1つ程度しか入らない高さ。

床下の土砂を取り除かなければ、シロアリが発生したり下水の異臭が残る。

災害ボランティアリーダーの資質

「被災地で活動をするリーダーの資質」と聞いて思い浮かぶものは何でしょうか?多くの方がもつ、リーダーのイメージは、「信頼されており、知識やスキルを備えもつ人間像」ではないでしょうか?

ここで重要な点は、必ずしもリーダーが「完璧な人間」ではないということです。私自身も、リーダーとして被災地で活動をすることは初めてでした。リーダーであっても、全てのスキル・判断基準をもっているとは限りません。まさしく、私自身がそうでした。

ボランティア活動の幅は広く、1つのスキルに長けていても、その他の内容を熟知していないということが往々にして起こります。私がリーダーを経験する中で感じた資質、それは現場の状況を読み取り即時に判断できる柔軟性です。

・作業効率を落としてでも、チームの安全を確保すること
・住民さんの本音を引き出すために、手を止めてでも会話を大切にすること
・チームの顔色や疲労度を把握し、休憩時間を長めにとること

このようなフレキシブルな対応ができることがリーダーの資質であると思いました。

 

水分を多く含んだ土砂出しの様子。画像中央付近の通気口から床下に進入する。

 


「完璧さ」は、必ずしも求められません。できないときは周囲の仲間の力を借りたらいいし、みんなで考えたらいい。私がどんなときも大切にしていたことは、チームに「不安」を与えないことです。被災地では、個々人に普段以上のストレスや負荷がかかっています。体力を使う現場も多くあり、被災地ということで周囲には危険な箇所も数多くあります。また被災者の方に気配りをする中で、いつも以上に気を張ってしまいます。

リーダーの一言に自信がなかったり、次々に計画を変更したりすると、チームに不信感が募り余計にストレスが溜まってしまいます。だから私は、すべての言葉に自信を込めました。もし、その時の行動が適切でなければ反省し、翌日以降は絶対に繰り返しません。そのような手探りの中、試行錯誤の連続だからこそ成長できたとも感じます。

リーダーは完璧な人間ではありません。自信をもって現場をコーディネートできる人間です

災害ボランティアリーダーの不足が復旧・復興を遅らせる

2011年3月11日、東日本で発生した地震と津波によって、東北地方沿岸部は壊滅的な被害を受けました。震災発生から半年の間で、約70万人の災害ボランティアが緊急・復旧支援に携わり、災害ボランティアは自治体・自衛隊・社会福祉協議会(以下、社協)などと並んで、支援活動の主要な役割を果たしました。

ただ、震災発生当初は災害ボランティアの受け入れがあまり進みませんでした。というのも、自治体や社協が被災したため、ボランティアの受け入れ先となる災害ボランティアセンター(社協が運営主体)の受け入れ体制が整わなかったのです。その一方で、ボランティア希望者を積極的に受け入れたのが、NGO/NPOなどのボランティア団体でした。

PBVは災害が発生した際、多くのボランティア希望者を受け入れている。



ボランティアが個人単位で支援活動を行うと、被災者のニーズとのマッチングやトラブルなどにより、自治体、災害ボランティアセンター、被災者に負担をかける可能性があります。NGO/NPOは、ボランティア希望者の「役に立ちたい」という想いを最大限に活かすため、あらかじめボランティア希望者を組織化し、被災地に必要な支援を機動的に行ってきました。

しかし、ボランティア団体にしても、ボランティアの受け入れを完全に担えたわけではありません。人材不足が大きな原因です。災害ボランティアセンターの運営をサポートする人材や、行政とボランティア団体をつなぐコーディネーターが不足していました。しかし、それ以上に不足していたのが、個人ボランティアを束ねて安全かつ効率的に行動するボランティアリーダーでした

ボランティアリーダーの不足が、ボランティアの受け入れ数に制限がかかった大きな要因となり、結果として、被災地支援の遅れを引き起こしたのです。

「リーダートレーニング」はあなたの将来にきっと役立つ

私がこのプログラムを受講して感じたことは、災害の現場だけでのみ発揮できる能力ではないということです。どのような状況でも、自分自身の判断だけでは、信頼を得られません。どれだけ尊敬をされている人でも、「自分の意思決定を曲げない、絶対としている人」の指示に従い続けることは、チームの不信感につながります。

被災地では、常に想像もしない意思決定の連続です。その判断は、チームの個々が意見をもっており、すべての意見が一致することもなければ、意見を収集する時間が確保できない場合も多くあります。最終はリーダーの判断で、状況を読み取っていかなければなりません。

そして、現場の判断は、刻一刻と変化をしていくので瞬時に意思決定を行うことが重要です。私が感じた現場での最優先事項は、やはり「チームの安全確保」です。「チームの安全」、いわゆる「仲間の命」を任されている、ということを忘れてはいけません。

この知識・スキルは、被災地支援でなくても、人として身に付けなければならないスキルの上位にあるものだと思います。

・周囲のことを俯瞰し、情報収集できること
・判断能力の向上、かつ最適な情報処理ができ適切な選択を即決できること
・相手を安心させ、相手が本当に求めていることを自然に引き出せること
・リスクマネジメントを常に心がけること

以上のことをこのプログラムから得ることができ、被災地で実践しました。

船内で行われた「災害ボランティア・リーダートレーニング」の修了式

「災害」は、私たちの生活から切って離すことはできません。自然現象ということもあり、私たちの将来に確実に起こる現象です。その時に備え、多くの人に実践していただきたいと心から願っています。

 

「災害ボランティア・リーダートレーニング」概要

PBV主催の「災害ボランティア・リーダートレーニング」が大阪市内で行われます。国内外問わず、災害ボランティアに興味がある方は、ぜひ受講をしてみてください。

〇日時
2018年6月16日(土)10:00~18:00
2018年6月17日(日)10:00~18:00

〇会場
大阪市住之江会館
16日:会議室2
17日:大会議室

〇参加費&持ち物
3,000円(サポート会員/学生:1,000円)
筆記用具、動きやすい服装

〇参加条件
1.被災地でのボランティア経験がある、もしくは災害ボランティア入門(Web検定含む)の受講
2.救急救命講習を受講している。
※日程が合わない場合は、応急手当WEB講習でも可
3.ボランティア保険(天災タイプ)に加入していること。

※詳細・申し込みはこちらのウェブページから
ピースボート災害ボランティアセンターのリーダートレーニング

最後に

東峰村での支援を終えたとき、

福岡を救ってくれてありがとう

と声をかけていただきました。

私は、この言葉を忘れることはありません。東峰村では40日間、すべての活動でリーダーを任され、延べ150人の方々とチームを組みました。初めてのリーダーという立場に戸惑い、初心者としてチームを引っ張っていく責任感の重さに、潰されそうになったこともありました。しかし、PBVのスタッフや同じ船旅をともにした仲間が励ましてくれたからこそ、この言葉に恥じない活動ができたと思います。

思い返すと、帰国して荷物をまとめ福岡空港に到着したとき、なぜこのように行動できたのかが不思議に感じました。福岡に所縁があるわけではありません。しかし、いま思うと船旅を通して日本中、世界中に「大切にしたい人」ができました。

私にとって、世界を単位に物事を考えられるように成長できたのだと思います。自分が生まれた日本で、大変な思いをしている人がいるのなら、「私にできる目の前のことに向かって、真っすぐな気持ちを持ち続けたい」と思います。それは、いまも同じ気持ちだし、これからもきっと変わりません。

誰かの心に残ることができるのなら、私にとってこれ以上の幸せはありません。

私にリーダーの信念を伝えてくれた辛嶋さんと仲間たちと。

 

「日本棚田百選」に数えられる東峰村の棚田。この場所は被害がなかった。同じ意思をもったメンバーとまたこの場所で再会できますように。

 

Writing by Shuhei Nonomura

of Peace Boat Staff.