「この航海は人生とセカイを広げる宝の地図」飯島 健

ピースボートセンターおおさか(ピーセンおおさか)ではたらくスタッフを紹介します。今回は地球7周した飯島健です。

飯島健 Iijima Ken(通称:飯島)

2005年からピースボートスタッフとして働く飯島はこれまでに地球7周しています。ショートクルーズも含めて計10回のクルーズを経験し、船内の新聞局長(船の中で毎日発行されている新聞があります)をつとめたり、水先案内人(乗船していただく著名人の方々)の講座づくり、洋上フリースクール、世界をめぐりながら学ぶ地球大学などを担当してきた経験豊富なスタッフです。

その経験を生かして、今はお問い合わせ窓口でこれから船に乗る方々の疑問に答えたり、相談にのったりしています。地球一周することは多くの人にとって大きな決断です。時には時間をかけて人生相談にのることもあります。地球一周をめざす若者にとって良き兄貴的存在です。

飯島健 プロフィール

千葉県茂原市出身。中学時代X JAPANを知り、ROCK少年に。主に生き辛さを全面に解放するヴィジュアル系バンドのベースを担当。東京で憧れのライブハウスに出演した後、バンドマンからホテルマンに転身。船を知るまでの四年間は東京ディズニーリゾートホテルで働く。趣味はカラオケ、読書、格闘技・映画鑑賞、セカイを知るための勉強会参加・実施、人生相談。

飯島健のブログ(人々との出会いやお薦め映画など書いてます)
ぶっ生き返し日誌〜あなたとセカイを紡ぐ宝の地図

世界を知らないことはこわいこと

世界にも人にも興味なかった

僕が全く興味の無かった「世界情勢」や「人」に興味を持ったのは、24歳の会社員当時に通い続けていたピースボートセンターとうきょうでした。

それまで学校の授業はまともに受けたこともなければ、新聞も本(音楽雑誌は別)も読んだことの無かった僕は、世界のニュースなんて全く関心がありませんでした。また、20代半ばにもなって友達を作ろうとも思っていなかったし、人見知りどころか極度の人間不信であった自分にとっては、そこでの出会いなんて全く求めていませんでした。

貧困、紛争、差別のない未来を創りたい

ですが、その頃僕の相手をしてくれたピースボートスタッフは違いました。世界の出来事や歴史、全く知らなかった他人の境遇や社会問題の数々を教えてもらい、僕はどんどん世界を知りたくなったのです。知らないことがあれば詳しい人を紹介してもらって、納得がいくまで質問をぶつける。そうこうしているうちにいつの間にかそれまでの人間嫌いは直り、むしろ今まで自分が捨ててきてしまった出会いを取り戻すかのように誰にでも話せるようになりました。

<イスラエルによるパレスチナ自治区ガザ空爆反対の声をあげる(2014年)>

世界のことに興味を持つことがなかったら、僕が今つながっている人々に出会うことはありませんでした。そして国内外の社会問題も他人事としてしか見られなかったら、とても冷たい世の中になってしまうと思うとこわいです。

歴史をたどってみても、いつの時代のどの国も、貧困や紛争や差別が始まってからでは、いくらデモをしようが泣き叫んだって遅いのです。そうならない未来を創るために、僕らにはもっと学ぶべきものがこのセカイには溢れているのです。

ピースボートセンターは地球一周を更に深める準備をするための港町

ピースボートセンター(ピーセン)に通うことで船や世界を楽しむための選択肢を多く持つことが出来た僕の地球一周は、一生分楽しんだんじゃないかと言うほど意義深いものになりました。目を背けたくなる現実やなかなか意見が合わずに理解しえなかった人とも向き合う自由な日々をおくることができました。

ピースボートは学びと出会いの宝庫

<はじめての地球一周でおとずれたイタリア。フィレンツェで唯一、第二次世界大戦中の破壊を免れたヴェッキオ橋をバックに。>

僕はピーセンや船で多くのことを学び、沢山の大切な人たちに出会いました。

自分とは関係がないと思っていた紛争地で見捨てられていく人々、差別を受けてきた人々、有ること無いことをまくし立てるメディアに翻弄される人々、目の前が真っ暗になって自分から命を絶とうとしている若者たち…。ピーセンに通うことで、そんな人々がいるということ、そしてセカイの現実を知りました。

そして、船では各界の専門家や活動家の方たちが水先案内人として乗船して、僕たちに世界で起こっていることやその解決に向けた動きを教えてくれました。僕にとって水先案内人の方々は世界に目を向けて行動しているかっこいい大人でした。

世界を知って行動できる環境がある

地球一周で自分が求めていた以上の人生の転機や巡り合わせをえた僕は、もっと世界を知りたいと思いました。そして今度は僕が誰かに世界の広さや人の深さを知るためのきっかけを与えたり、行動できる環境づくりが出来たらと思いました。

そんな環境がピースボートにはあります。地雷除去の募金活動、パレスチナ難民とのフェアトレード、サッカーボールや文房具などの世界へ届ける支援物資集め、世界を知るための勉強会や同じ船に乗る人たちとの交流会。ピーセンではいろんなきっかけを準備して皆さんを待っています。

日本から自殺者を減らすために船を出す

<船内での地球大学の授業風景>

ピースボートスタッフをやっているとよく聴かれる質問が、「健さんはなんで船を出し続けているの?」。そんなとき僕は迷わず「日本から一人でも自殺者を減らすために出している」と答えています。

世界から見ても、日本は先進国の中で圧倒的な自殺率の高さで有名です。この国では戦争や難民キャンプがあるわけでもないのに、今世界で起きているどんな紛争国や飢餓で苦しむ国よりも、日本の自殺者は多いという皮肉な現実があります。

かく言う自分自身も、十代半ばから二十代半ばまで希望的な未来が見い出せず、似たように絶望していた時期がありました。その気持ちや経験が多少ある分、僕のところには今でも「死にたい」と叫ぶ若者たちからの相談も後を絶ちません。

けどそれは、どれだけかっこいい大人たちがいるかと言うことを見つけられなかったからだと思います。少なくとも僕自身はそうでした。尊敬できたり目指すべき目標となる大人と巡り会うことができたら、この問題も減らせると確信したのです。そしてピースボートの船はそんなかっこいい大人と出会える場があります。

木曜BKKウメダ大学はじめました

その一環として、世界をもっと身近に感じて価値観を広げることができる「学ぶ場」をつくりたいと考えて、ピーセンおおさかで「木曜BKKウメダ大学」をはじめました。(BKKは勉強会のことです。)

大阪では世界のことを知るきっかけとなる勉強会をいろんな団体がやっているし、多くのイベントスペースやサードプレイス(自宅と職場・学校とは違う第三の居場所)などもあります。おもしろい活動をしている人たちがたくさんいます。大阪で世界に目を向けて活動している人たちや世界の問題を紹介する場として、この勉強会をつくっています。

世界を知ることは自分の未来を創ること。「そんなのもっと早く知りたかった」と言うことがないように、ここに集まる人のニーズを重視してこれからも沢山の企画をしていこうと思っているので、気軽に遊びに来てくださいね。

セカイを知った分だけ、ご自身が求めていたもの(もしくはそれ以上の副産物)に出会えることでしょう。

<憧れのカミーロ(キューバの革命家)と@キューバ革命広場>

※ウメダ大学はピースボートボランティアスタッフを対象に毎週木曜に開催しています。また、月1回はどなたも参加していただけるオープン企画もあります。今後の予定はイベントページをご覧ください。

 

文:飯島健  編集:森田幸子