7日間の漁村留学「イマ、ココプロジェクト。」 ~東日本大震災の被災地で漁師さんのお手伝い体験~

こんにちは!
ピースボートセンターおおさか(ピーセン大阪)でボランティアスタッフをしているアブラヤサエ(通称かかお)です。先日、私とアラキナナミ(通称キジヒコ)の2人で「イマ、ココ報告会」という漁村留学の経験をお話しする企画をおこないました。

4月5日~11日までの1週間、私は宮城県石巻市福貴浦に、そしてキジヒコは石巻市十三浜に滞在しました。より多くの方に被災地の今と私の体験をお伝えしたいので、こちらのブログでも報告します。ぜひ最後までご覧ください!

イマ、ココってなに?

正式名称は「イマ、ココプロジェクト。(以下イマ、ココ)」といい、「今、ここに助けが必要」ということや、”Co”rporative(協力), “Co”operation(協働), “Co”existence(共生)などから「共に」というような意味を持つ「Co」をモジってつけられています。 宮城県石巻市で漁村留学、漁師体験ができるプロジェクトです。

漁師さん宅にホームステイをしながら、漁のお手伝いをします。お手伝いをしていく中で受け入れ先の家族や浜の方(漁師さんや浜で働く方)と交流をし、より深い関係を築いていくことが出来ます。

このプロジェクトは東日本大震災の復興支援がきっかけで設立された「ピースボートセンターいしのまき」がおこなっているものです。被災地と呼ばれるところを自分の目で見、肌で感じることによって、今の被災の現状を学ぶことも出来ます。

私のイマ、ココ体験記

参加へのきっかけ

なぜ私がイマ、ココに参加しようと思ったのか、理由は2つあります。1つは、友達が実際にイマ、ココに参加していたこと。彼の感想等をFacebookで読み漁業に対して興味が湧いたのと、私自身海産物が大好きなのにスーパーや飲食店で出てくるものしか知らない…。生産者側のことをもっと知りたい!と感じたからです。

もう1つは、被災地を自分の目で見て学びたいという思い。私にとってどこか他人事のような感覚の東日本大震災を他人事で終わらせないために、また30年以内に確実にくると言われている南海トラフ地震に備え、被災地の今を自分の目で見て体で感じたいと思いました。

1日の流れ

私の朝は6時から始まりました。白米、海藻たっぷりのお味噌汁、おかず4品という豪華な朝食を食べ、7時から16時半まで作業をしました。途中に2度のおやつ休憩とお昼休憩があり、コーヒーを飲みながらみんなで持ち寄ったお菓子を食べたり浜の方とお話をしたり、お弁当を食べたりしました。

作業終わりの17~18時の間は、毎日一人で浜を散歩していました。ある日は何も考えずに空の色が濃くなっていくのをただ眺めたり、またある日は波の音や鳥の声に耳を傾けたり。今はこんなに穏やかで私の心を癒してくれる海が7年前にはこの地に甚大な被害をもたらしたのか…と考えたり、夕方の浜での時間は私にとってとても貴重で、私の心を整理し整えてくれる素敵なものになりました。

作業について

私が参加した時期は、わかめの収穫とその加工が主な作業でした。浜で「めかぶそぎ」と「芯抜き」という次の業者に回すための作業をしていました。めかぶを硬い茎からはがす作業をめかぶそぎ、わかめを茎からはがして分け、さらに元葉や切れ葉等に分けていく作業を芯抜きといいます。

浜の人たちにもらった心に残る言葉たち

浜の方々と交流をしていく中で、私の心に特に残った言葉たちについて紹介していきます。

 

「今年も立派に育ってくれてありがとう。」

作業をしていた方のわかめに向けた言葉です。この言葉から自分たちの育てたわかめに対する“愛”を感じることが出来ました。

 

「生産者側って大変なことも多いけど、結局とっても楽しいよね!」

一本一本手作業でわかめの芯抜きをしている最中に放たれた言葉です。大量のわかめを一本一本手間暇かけて作業するのはとても楽なことではありません。が、浜の方々はそれを楽しんでいて、仕事やわかめに対する誇りを知りました。

 

「何もかもが変わってしまった。」

重機が立ち並ぶ自分たちの浜を見ながら、おばあちゃんがぼそっと呟いた言葉です。この言葉を聞いて私はとても寂しく、また悲しくなりました。津波で甚大な被害を受け、何もかも変わってしまったところで作業をするということはきっととても辛いことだと思います。そんな中でも毎日一生懸命に働く人々から、「強さ」というものを学ぶことが出来ました。

 

「色んな人が色んなところからボランティアに来てくれるから今まで頑張ってこられたし、これからも頑張れる。

最終日に浜の代表の方に言ってもらった言葉です。この言葉を聞くまで私は、「漁を知らない私一人がボランティアをしたとしてこれは本当にボランティアになっているのか?また復興に繋がっているのか?」と、悶々とした感情を抱いていました。しかしこの言葉を聞いて、この感情がスーーっとどこかに消えていくような感覚がしました。私の存在もこの浜のカケラになっているんだということを感じることができ、とても嬉しかったのを今でも覚えています。

災害の経験は風化させたらダメだ

参加前の私は、

「初めての漁師体験、きちんと働けるのかな?」
「受け入れ先の家族の方と仲良くなれるのかな?」
「実際に被災地を見て自分はどう思うのかな?」

というような、楽しみよりも不安が大きい状態でした。しかし参加後の今、それらの不安は無駄なものだったと感じます。浜の方々や受け入れ先の家族の方が私を快く迎え入れてくれ、沢山話しかけてくれたおかげで毎日をとても楽しく、そして快適に過ごすことが出来ました。

また被災地を自分で体験したことによって、よりいっそう地震や津波のリアルさ・恐ろしさを感じました。実際に起こった被害をきちんと認知し、過去のものとして風化させないことが防災に繋がる大切なことなんだと身をもって学びました。

多くの人にイマ、ココ体験してほしい

私は人前で話すことがあまり得意ではありません。さらにはパワポも作ったことがないというような状況でした。ですがイマ、ココを通じて得た思い出たちがあまりに素晴らしく、ぜひ他のボランティアスタッフやスタッフさんにも紹介したい!という思いから、報告会を企画しました。私にとって初めての試みだったのでとても緊張したし、人が集まるか、発表は上手くいくか等とても不安だったのですが、報告会終了後に

「めっちゃ良かったよ!お疲れ様!」
「私もこれ行きたい!どこから申し込めばいいの?」
「興味わきました!またゆっくりお話ししたいです。」

というような言葉を色んな方からかけて頂き、「一生懸命企画を作成して良かったなあ」と、達成感を感じることが出来ました。報告会終了後すぐにイマ、ココに申し込みをした方も数人いて、自分の言葉や思いが周りの人を動かすキッカケになったんだと思うと凄く嬉しかったです。プロジェクトに参加したのはもう1ヶ月以上も前のことですが、今回の報告会をもって、やっと私のイマ、ココプロジェクトは終了しました。

このブログの原稿を考えながら思い出を振り返り、深く考えていくなかで見えてきたことも沢山あります。イマ、ココをまだ知らない人のための報告会でしたが、報告会に向けての準備をしている中で、改めて「イマ、ココプロジェクト」で学んだことや得たことと向き合うことができ、また一つ自分自身を成長させることが出来たのではないかなと思います。

 

あなたもイマ、ココで素敵な思い出を作ってみませんか?

イマ、ココプロジェクト。詳しくは…

イマ、ココプロジェクト。に興味をもってもらえたら、是非こちらのホームページをご覧ください。参加者を募集中です。

イマ、ココプロジェクト。~7日間からできる漁村留学~

 

文:アブラヤサエ 編集:森田幸子