建築から見る世界の生活~文化や習慣が生み出すユニークなお家~
【地球を旅するピースボートスタッフがみる「世界」】シリーズ

「地球一周の船旅」を出し続けることで地球を楽しみ、世界中の人々と出会い、文化・歴史を学び、紛争・環境・人権問題などグローバルな課題に取り組むピースボートスタッフが、ごく個人的な視点と興味でつづります。

こんにちは!ピースボートスタッフの大西真央(通称:れたす)です!

今回の記事は、大学で建築インテリアを専攻していたれたすが送る「建築から見る世界の生活」を紹介します✨

日本の暦にはさまざま季節に合わせたイベントがありますよね。そして10月は「住生活月間」らしいです!なんということでしょう、私にピッタリな月間。

冗談はさておき…(笑)、住居は「生活の器」といわれ、そこに生活する人に合わせて設計がされるものです。

つまり、現地の生活を知りたければ住居をみると文化や習慣が色濃く残されているので分かってしまう、ということになります!

そこで世界のさまざまな家を見てみようというのが今回の記事です。

日本の家とは全く違った国もあれば、少し似通っている部分がある国もあります。ぜひ建築からみる世界の生活を楽しんでください♪

移動式住居 ゲル(モンゴル)

 

まずはモンゴルのゲル。このテントのような家を見たことがある人は多いのではないでしょうか。

モンゴルの高原地帯は樹木が育ちにくいですが、短い草は生えます。この短い草があるので、遊牧中心の生活がこの地域では発達しました。

ですが、短い草も植物です。季節により生えている場所は変わります。

そこで、季節によって最も遊牧に適した場所を探して家とともに移動して暮らしていくようになりました。

この移動生活に適した家が、折りたたんで持ち運ぶことができるゲルです。床板なしで250〜300kgあり、牛やラクダ、最近はトラックに乗せて運んでいるそうです。

直径は4.5〜6.5mで1つの核家族が住める広さです。組み立ては2~3人で大体1時間半程度。

中心に2本の柱をたて、屋根の骨組みと網目のコンパクトに折り畳める壁を設置し、その上に布を被せます。この布も重ね着させて寒さを凌いだり、麻素材にして夏でも通気性を良くしたり、季節によって工夫されています。

トーリと呼ばれる屋根の穴。屋根の中心には穴が空いており、天窓の役割を果たします。

モンゴル人は大体の人がモンゴル仏教徒なので、この天窓の下には祭壇が設置されています。ゲルの入り口を入って正面の中央が最も重要な場所とされているので、ここに設置されているのです。

入り口に入って右側は女性、左側が男性と座る場所が決まっていて、台所用品は女性側、馬具や家畜用の道具は男性側に置かれています。

こういった決まりも最近はなくなりつつあるそうです。

中庭型住居 日干しレンガの家(アルジェリア)

アルジェリアのインベルベルという町はサハラ砂漠の中にあります。ここでは水は貴重で、コップ1杯の水で歯磨きや洗顔をします。

誰がどれだけ水を使って良いのか、村の年長が決めて水争いがないようにしています。

水は希少ですが砂は豊富にあります。実は乾燥した砂って雑菌や臭いもなく不潔感はないんです。食品も空気が乾燥しているので腐りにくく長持ちします。

日干しレンガの作り方は、土に砂や干し草、水やロバの尿を混ぜて練って、木枠に入れて乾燥して、日干しして積み上げていきます。

なんと日干しレンガはほぼ無料。レンガが割れたり崩れてしまえば材料は手に入りやすいのですぐに修繕でき、長持ちさせることができます。

砂漠にある少ない資源を最大限活用しています。

日干しレンガ造りの家には窓がありません。そのため光を取り入れるため中庭を間取りに取り入れています。また、窓がないため風が部屋に入らず土埃対策もできます。

中庭は3.5m四方で、壁は3mもあります。これだけ高い壁なので日影ができやすく、砂漠の強い日差しを避けることができます。空気が乾燥しているので日影があるだけで十分涼めます。

日中の明り取り以外に憩いとコミュニケーションの場としても使われており、この地帯はほぼ雨が降らないのでリビングのように過ごしていることも多いそうです。

この中庭は宗教上外に出ることが制限されている女性たちにとっても癒しの場となっています。女性専用の中庭もあり、そこの空間では女性たちはベールを脱いでおしゃべりを楽しんでいます。

中庭の重要性というのはイスラム教の聖典コーランにも記載があり、そこには「水が緑を育て、緑が日影をつくる」とあり天国のイメージがまさに中庭なのだとか。

自分の家に天国のイメージを再現した感じですね。

そして、この家には屋上もあります! 雨が降らない、周りに外灯もほぼないので息をのむような満天の星空を屋上に出るだけで楽しめます。

要塞のような共同住宅 福建土楼(中国)

皆さんはこの建物を見たことがありますか?

要塞のように見えますが実は家なんです!

アメリカの衛星も核兵器の打ち上げ施設と間違えて大騒ぎになったほどインパクトの強いこの家は、福建土楼(ふっけんどろう)という共同住宅で現在でいうマンションの元になったともいわれている建物です。

2008年には世界遺産にも登録されました。

元々は敵から逃れてきた客家(漢民族の一支流)の人々が獣や外敵の襲来に備えて、分厚くて入口が1つしかない家を立てたのがこの福建土楼の始まりです。壁の厚さは1.6mにもなる土楼もあるそうです。

要塞のような土楼は、ある種閉鎖的な建物なので住人の人間関係は重要なんです。

大体この土楼は3~4階建てが多いですが、住民の立場に差が出ないよう1階は食堂や売店、2階は食糧庫、3階が住居となっています。

また、廊下で隣とつながったりご近所付き合いができるように工夫されているのも面白いポイントですね。

このようにコミュニケーションが活発になるよう建物に工夫がされているので、福建土楼を参考につくられた現代のマンションなんかもあります。

洞窟の家 カッパドキア(トルコ)

トルコのカッパドキアにもユニークな家があります。

火山噴火で堆積した凝灰岩が風の浸食により削れて、ラクダやキノコのような奇妙な形になった岩をこの地域ではよく目にすることができます。

その岩を掘ってつくられたのがこの洞窟の家です。

カッパドキア地方では市場や資源を狙った侵入や略奪があったため、敵から気づかれないように入口を隠せる大小の洞窟に住むようになりました。

この洞窟の家は意外と機能性が良く、優れた断熱性で夏は涼しく、冬は暖かく過ごすことができます。

また、岩の特性を活かし目的別に部屋がいくつもわかれており、日当たりがなく涼しい部屋はジャガイモや干しブドウの保管場所になったり、明るく暖かい部屋は台所やリビングになっています。

食器棚などの家具も岩をくりぬいて窓枠を追加し、収納としてつくってしまうこともできます。自分好みのサイズ感でつくれるので便利そうですよね。

このカッパドキアの洞窟の家は置物としてお土産屋に置いてあったりするので、ぜひ買ってみてください。

旅行に行ったら建物を観察してみよう

いかがでしたか? 建物から各国の生活を垣間見ることができたでしょうか?

ちょっと視点を変えるだけで面白い発見がありますよね。

ぜひ皆さんも海外旅行に行った際は、建物もよく観察してみてください。

私たちの身の回りにはない、ユニークな工夫や習慣が隠されているかもしれません。

 

ピースボートスタッフ 大西真央