動物たちが健康的に生きていける世界をつくるためにわたしたちができること

こんにちは、ピースボートスタッフの関です。9月19日、「動物から見た地球」というタイトルで勉強会をおこないました。

ピースボートセンターおおさかでは「ウメダ大学」と題した勉強会を行っています。これから船に乗って世界を見に行くボランティアスタッフや、世界に興味のある方に向けて様々なジャンルのお話を行っております。各界の専門家やジャーナリスト、ミュージシャン、そしてピースボートスタッフなどが講師となってバラエティー豊かな勉強会を開催しています。

そして、今回は私が講師をさせていただきました。 ボランティアスタッフや、外部から話を聞きに来られた方で20名ほどの参加者がいました。

私はもともと、動物が好きで動物に関わる仕事がしたいと思い、動物看護師として働いていたのですが、船に乗るために辞めました。そんな私が、世界で見た動物たちの現状や、私たち人間の暮らしの中で動物はどんな関わりを持ってるかをお話しました。講演の内容をブログでもお届けします。

国でちがうペットとしての動物との関わり方

私たちにとって、一番身近な動物ってペットとしての関わりだと思います! 動物を飼おうと思ったらまずはペットショップに行きませんか?しかし、ヨーロッパの国ではペットショップでの生き物の販売を虐待としているのでブリーダーさんと直接やりとりするのが一般的です。

ヨーロッパの多くの国は「動物愛護先進国」と言われる程、動物の愛護に力を注いでいます。私も調べて驚いたのですが、ドイツは殺処分場がなく、6時間以上ペットだけで留守番させると罰金がかかる法律があるそうです!

発展途上国と呼ばれる国では、まるまる太った大きな野良犬がそこら中を歩いていました。しかし、先進国に含まれるような国に行くと野良犬は減り、リードをつけたり、飼い主と一緒に歩く犬を多く見かけるようになりました。ペットを飼えるということは生活やその国の治安が安定しているということ。これは、船で地球一周している中での発見でした。

わたしたちの生活の中で犠牲となる動物

農薬、薬、化粧品、付箋、コンタクトレンズ、たばこ……。これらは、つくる過程で動物実験が行われているものです。人間が食べて害がないのか?皮膚に当たった時に異常がでないか?目に入れても危険はないのか?付箋のシール部分は安全なのか?

実際にあった話ですが、「インフルエンザに醤油が効くらしい!」という説があれば、インフルエンザに感染させたマウスに数滴垂らした醤油を飲ませてみて、実際どんな反応が出るのか実験したりします。そもそも、マウスは醤油をつけてご飯は食べません……。

ピースボートでは、「ハッピーシェア地球便」という、LUSHの石けんを支援物資としてさまざまな国に届ける活動をしています。

このLUSHは大々的に「動物実験反対」を掲げています。現在、動物実験を廃止している企業は増えています。なので、そういった企業のものを選択して使うことで動物実験を良しとしない世界に近づける事が出来ます。

環境破壊により住む場所をうばわれる動物たち

最近多発しているアマゾンの森林火災はご存じですか?ブラジルでは今年1~8月の間に 7万2,000件以上の森林火災が起きました。これは昨年の同時期よりも84%も多いそうです。地球で最大の熱帯雨林であるアマゾン熱帯雨林は大気中の酸素の20%を供給するため「地球の肺」と言われており、私たち地球に住んでる生き物に関わる話です。

なぜ火災が増えたのか?牛肉のための牧草地や大豆畑のために土地を使いたい業者達や大地主達が原生林に火を放つことが横行したり、土地開発で乾燥したために火災が発生したりしています。私たちも、大豆製品やお肉食べますよね?決して私たちに無関係の話ではありません。

こういった現状は、日本の裏側のブラジルだけではありません。東南アジアのボルネオ島でも似たようなことが起こっています。ここでは、たくさんの動植物が生きていますが、パーム油を取るために森林開発が進んでいます。パーム油は、マーガリンやインスタントラーメン、冷凍・レトルト食品、チョコレート等に使われています。

世界で3番目に大きなボルネオ島には、地球上の生物種のおよそ5%が生息しています。オランウータン、象、サイといった大型の哺乳動物にとっても地球上に残された数少ない生息地となっていますが、過去半世紀のうちに急速に森が破壊され、現在までに実に50%が消失しています。

そして実は、そんな開発されている国以上に、日本の絶滅危惧種の数が多いのです。日本国内で確認されている絶滅危惧種は3680種に上るそうです。動物だけでも、コウノトリやツキノワグマ、ラッコなど1410種が絶滅の危機に瀕しています。(環境省レッドリスト2019参照)

多くの生物がすんでいる日本ですが、森林の伐採や、生活排水の水質汚染などで生物が生活できる場所が奪われたり、毛皮や装飾品・インテリアとして乱獲されたりしています。私たち人間の生活が他の生物に多大な影響を与えているのです。

象の孤児院で実感した多角的にとらえることの大切さ

最後に、ピースボートの船旅で行ったタイでの話です。象の孤児院に行くツアーの担当になり、楽しそうに象に乗ってます。ここでは、ジャングルで親を亡くしたり、はぐれてしまった子象、けがをして野生に戻れなくなった象がいます。中には密猟者によって親を失った象もいます。

しかし、人に慣れさせるための象の調教の仕方等を見ていると、考えさせられることが多くありました。象牙を取るためにたくさんの象が殺されている現状。そうした一方で、象の被害で亡くなる人々もいます。

動物を調教することに対して、動物虐待だと言われることもあります。でも野生の象に近づくことは危険です。調教することで人は象と触れ合うことができます。調教された象に会うために観光客は象の孤児院にやってきてお金を落としていきます。そのお金が孤児院の資金となり、象の命を救うことになります。

調教だけを見て良い悪いを決めることはできない事情がそこにはありました。

ピースボート「地球一周の船旅」でも世界の動物について学ぶ機会があります

地球上で起こっている様々な出来事は、一つの方向からだけ見て判断することは出来ません。様々な出来事が絡まり合った結果見えているのは一部です。

わたしは動物看護士だったので、もちろん動物は大好きでしたが、世界の動物の現状や多角的な視点を持つことを教えてもらったのはピースボートの船の中での様々な企画や、水先案内人と呼ばれる船にゲストとして乗ってこられた方々の講演でした。今回の話に関わる水先案内人は、旭山動物園の園長でマレーシアの森の保全活動などにも携わる板東元さんや、ノンフィクション作家で映画監督である森達也さんなどがいらっしゃいます。

坂東元さんにピースボートの船で講演していただいた様子はこちらにも掲載していますので、ぜひご覧ください。
【ピースボートクルーズレポート】動物と向き合って生きる 坂東元さん

森達也さんは「いのちの食べかた」という本で、お肉がどのように私たちのところにやってくるのかを書いています。そしてその事実から目をそらさないこと、知ることの大切さを伝えています。
「いのちの食べかた」森達也著

勉強会に来られた方や読んでいただいた方にとって、この話が動物のことを考えるきっかけや、1つの出来事を様々な面から見るきっかけになれば嬉しく思います。

 

ピースボートスタッフ 関美衣