伊勢で原爆の被爆者による証言会をおこないました

日本全国に被爆者の声をとどけるピースボート「おりづる全国証言会」

こんにちは、ピースボートスタッフのゆりゆりこと村上佑理です。2月2日、広島・長崎の被爆者に話をしていただく「おりづる全国証言会」のために伊勢まで行ってきました。証言会には教育関係者を中心に約30名の方に参加していただきました。

被爆者の声を伝えることで核廃絶をめざす「おりづるプロジェクト」

ピースボートは世界をめぐりながら様々な平和活動をおこなっています。その中の1つが「おりづるプロジェクト」。核兵器の恐ろしさを伝えるため、広島・長崎の被爆者とともに船旅を通じて世界各地で原爆被害の証言活動をおこなっています。

<2018年9月出航の99回クルーズに乗船した2名の被爆者と。ピースボートは2008年からこれまでに170名以上の被爆者とともに地球を周りながら、「核なき世界」へのアピールをしてきました。>

おりづるプロジェクトでは「今あらためて、日本全国に被爆者の声を届けたい」との思いをもとにクラウドファンディングプロジェクトを立ち上げました。2017年12月から2018年1月にかけておこなったクラウドファンディングにたくさんの人にご支援・ご協力いただき、200万円をこえる募金が集まりました。集まったお金をもとに、全国に被爆証言を届ける「おりづる全国証言会」を開催しています。

そして、この「おりづる全国証言会」の第4弾が今回の伊勢での証言会でした。クラウドファンディングの際に「あなたの街で証言会を開催します!」のプランに寄付をしてくださったニューヨーク在住の方が、ご自身の出身地である伊勢で証言会をしたいということで実現したものです。

「おりづる全国証言会」in伊勢

 

証言者は三重県原爆被災者の会(三友会)の事務局長をしている、坂牧幸子さん。1945年8月9日、長崎への原爆投下によって被曝した時はわずか1才でした。まず坂牧さんご出演のドキュメンタリー番組を上映し、続けて坂牧さんにお話していただきました。

ビンの中のお父さん 被爆者調査 “真の狙い”

中京テレビが2017年に制作した『ビンの中のお父さん 被爆者調査 “真の狙い” 』は坂牧さんを取材することで、アメリカによる被爆者調査の狙いを探るとともに、それにより翻弄された人々を追った番組です。2018年、このドキュメンタリーは優れた番組に贈られるABUアジア太平洋放送連合賞最優秀賞を受賞しました。その内容は以下のようなものです。

坂牧さんのお父さんは被爆から24年後に亡くなりました。そしてその遺体はABCC(アメリカがつくった原爆傷害調査委員会の略)によって解剖され被爆者研究に使われました。ABCCは調査をおこなうだけで治療はされなかったと言われています。そしてその調査は、あらたな核兵器の開発のためでした。被爆者のためになると、言われるがままにお父さんの遺体をABCCに渡してしまい、その時の自分の決断を責め続けているとおっしゃっていました。

そんな中で長崎大学に今もお父さんの臓器が保管されていることがわかります。今でも、今後医学が進歩する中でさらに役立つ可能性があるということで臓器の保管が続けられているそうです。坂牧さんは長崎の原爆の日(8月9日)にお父さんに会うことを決め、長崎大学を訪れて臓器と対面します。ドキュメンタリーは「お父さん、さようなら、またね」と言って坂牧さんがその場を後にするシーンで終わります。

もう、核兵器によって不幸になる人を出したくないから証言活動を続ける

坂牧さんは、自身の被爆体験についても話してくださいました。原爆投下の瞬間にお母さんの腕の中に抱かれたまま2~3メートル吹き飛ばされたそうです。放射能の影響で髪の毛が抜け火傷もひどかったけど、薬も十分になく、医者もいない中で苦労したそうです。

お父さんは被曝による病気に苦しみ、またお母さんも亡くなり、原爆のために家族がばらばらになるという経験をされた坂牧さん。今後こんな不幸な思いをしてしまう人が出てはいけないと思うようになりました。当時の状況を知る方が少なくなっていることもあり、原爆の恐ろしさ、命の尊さを伝えるため証言活動をおこなうようになりました。

平和を実現するために行動していきたい

<左からピースボートの堀場、坂牧さん、そして会場となったmaAmaサロンのみなさん。前がわたし。>

わたしにとっても、このドキュメンタリーを見るのははじめてでした。このように個人の尊厳を無視した行為が平気で行われていた事実に、ショックを受けました。そして被爆後、戦争が終わってからもなお、今日まで続くたくさんの試練や葛藤に苦しんで、その中で生き抜いてきた坂牧さんの平和を願う思いに心を打たれました。

その後の交流会では、核兵器廃絶に向けてどのように取り組んでいくべきか、そしてどのように伝えていくべきか、平和教育のあり方について、たくさんの意見が交わされました。広島や長崎の被爆者から直接話を聞く機会はほとんどありません。参加者の多くが教育関係者だったこともあり、今後平和を担っていく子ども達に対して、このような事実があったということや、目を背けられがちな戦争の真実、加害の事実等をきちんと伝えていく機会を増やしていきたいという意見が多くありました。

参加者のお一人からは「ひとりひとりの大切ないのちの物語を次へと繋いでいくこと。それが真の平和への近道なのかもしれないと感じた」と感想をいただきました。

<広島平和都市記念碑(出典:総務省ホームページ)>

広島の原爆死没者慰霊碑には「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」と刻まれています。ただ戦争は悪い、戦争で死んでいった人たちや苦しい思いをした人はかわいそうというだけではなく、今を生きるわたしたちが過去の歴史を学び、「過ちを繰返さない」ために、今後の平和な世界を実現していくための選択と行動をしていきたいと、強く思いました。

「おりづる全国証言会」にご協力ください

ピースボートは多くの日本に暮らす人々に被爆者の声を届けたいと思っています。引き続き「おりづる全国証言会」への支援金を募集しています。
詳しくはこちらのウェブをご覧ください。
全国に被爆証言を届ける「おりづる全国証言会」を開催中です

ご協力よろしくおねがいします!

 

ピースボートスタッフ 村上佑理