切った後ゴミになるはずだった髪の毛が誰かの笑顔を作る、そんな素敵な仕組み

【SDGsとピースボートとわたし】髪を失った子どもたちのためのヘアドネーション/南アフリカのスラムに暮らす子どもたちへ届けるカメラ

【SDGsとピースボートとわたし】シリーズ

ピースボートは、国連との特別協議資格を持つNGOとして、国連「持続可能な開発目標 (以下SDGs)」の達成を目指すさまざまなプロジェクトに取り組んでいます。そして、わたしたち一人ひとりの行動もSDGsを意識することで、よりよい世界をつくることにつながっています。ピースボートスタッフが考える、それぞれの「SDGsとピースボートとわたし」の関係を紹介します。

こんにちは。ピースボートスタッフの神野景子です。今回は私が気になる2つのSDGsゴール【SDGs 3 すべての人に健康と福祉を】【SDGs 4 質の高い教育をみんなに】についてお話します。

わたしの髪が子どもたちの医療用ウィッグになる

先日、念願だったヘアドネーションをしてきました!ヘアドネーションとは、言葉通り、髪の毛の寄付。小児がんや先天性の脱毛症、不慮の事故などで頭髪を失った子どものために、寄付された髪の毛でウィッグを作り無償で提供する活動のことです。ご存じの方も多いのではないでしょうか?

この活動を知った時、すぐに「私も絶対寄付する!」と決めました。中学生くらいから髪の毛をのばすようになり、ある程度伸ばしたらバッサリ切りたくなって切る、そしてまたのばす……ということを繰り返していた私にとって、ヘアドネーションという仕組みは衝撃的でした。

自分が自分のために当たり前のようにしてきたことで、誰かの役に立てるかもしれない。自分も髪を切って気分転換できて、その髪の毛で笑顔になってくれる人がいる、そんな双方にとっていい状況を作り出せるなんて、なんて素敵な循環なんだろうと。そんなことを思ったのが何年前かは忘れましたが(笑)、やっとのことでお届けできました。

こちらがその受領書です。

私が寄付したのは、Japan Hair Donation & Charity(JHD&Cジャーダック)というNPO団体。一般の方からヘアドネーションを募り、この髪の寄付と募金等によりフルオーダーのメディカル・ウィッグ『Onewig』(JIS規格取得)を製作し、髪に悩みを抱える18歳以下の子どもたちに医療用ウィッグを完全無償提供している、国内唯一のNPO法人です。

寄付の条件は
・31cm以上の長さがあること(31センチ以下でも受け付けている団体もあります)
・カラー、パーマ、ブリーチヘアでもOK
・完全に乾いていること

私はこの活動に賛同している美容院で切ってもらいました。美容院でお願いする場合は、必ず「シャンプー前のドネーションカットをお願いします」と伝えましょう。少しでも湿っていると雑菌が繁殖したりカビが生えたりして、ウィッグの素材として利用できなくなります。自分で切って送ることもできますよ♪

「頭髪に悩みを抱える子どもたち」が学校へ行き日常生活を送れるように

抗ガン剤治療や放射線治療を受ける場合、副作用による脱毛問題は復学の際の一番のネックになっているとの報告もあり、実は、病気と同等に深刻な問題になっているそうです。髪を失った子どもたちがウィッグをつけることで治療に前向きになったり、普通の何気ない日常を送れるようになったりするなら、それはQOL(quality of life 生活の質の意味)の向上といえるでしょう。

そんな中、小児用ウィッグを手に入れるには、大変高価(30万~50万円)なセミオーダーやフルオーダーで購入せざるをえない状況だそうで、更に、成長によるサイズの変化や経年劣化に伴う買い換えは必須であり、治療と並行してその費用を捻出することは、家計への重い負担になります。

最初は普段の自分のしていることで誰かの役に立てるのなら!という軽い気持ちで興味を持ちましたが、現状を知っていく中で、もっともっとこの活動が広まっていき、経済状況に関係なく、ウィッグを待つ多くの子どもに届いてほしいと思うようになりました。

必ずしもウィッグを必要としない社会へ

JHD&Cジャーダックの目指すところもとっても素敵なのです。それはこの活動が終わること。なぜなら、「必ずしもウィッグを必要としない社会」を目指しているからです。

――病気や事故で髪をなくしても、クラスメイトから奇異な目で見られることなく、これまでどおりつきあえる、そんな仲間や友達がいる学校。ウィッグをつけなくても、ジロジロと見られない社会――

さまざまな髪形が個性として受け入れられているように、「髪がない」ことも個性として迎えられる、そんな多様性のある社会をめざして活動を続けているということです。髪の毛がなくてもいいけど、オシャレをしたいからウィッグをつける。そんな選択ができるような社会になっていってほしいですね。

髪を切らないヘアドネーション

この仕組みを知って「いいな」と思っても、なかなか状況によっては難しい場合もあると思います。お仕事の都合などもあるでしょうし、特に男性だとなかなか難しいですよね。実際に髪の毛を伸ばしたいと思っている私でも、ここに至るには、なかなかに長い道のりでした(笑)。

人間の髪の毛の伸びる速度は1ヵ月で1cm程度といわれています。ヘアドネーションすると決めたものの、長く伸ばすと毛先が痛んできて切りたくなり、そうなるとまた、ドネーションできるタイミングがどんどん先延ばしになっていきました。「今回こそは!」と意気込んで行ったときには「切れるけど、わかめちゃんくらいの長さになるよ」と言われ断念……。その次のタイミングでやっと切ることができました♪

でも実は、髪の毛を切らなくてもできる協力活動があります!その名も「ヘアドネーションシャンプー」。収益金の全額が、JHD&Cのウィッグ製作費として寄付されるため、普段のシャンプーをこちらに切り替えることで活動をサポートすることができます。

もしここまで読んで興味を持ってくださったら、どういったかかわり方をしてみたいですか?SDGsも「持続可能な開発目標」という名前であるように、まずは自分のできる範囲のことから、無理なく持続可能な方法で始めてみてください。

私は次はもう少し長いウィッグを作れるように、今から髪の毛を大事に伸ばしていこうと思います。

南アフリカの写真教室に日本で集めたカメラを届けました

もう1つ、【SDGs 4 質の高い教育をみんなに】に関係したピースボートの活動をご紹介します。ピースボートでは、南アフリカを訪れた際に、南アフリカ最大の黒人居住区ソウェト生まれの写真家、ビクター・マトムさんが主催する写真教室へカメラを届けるという活動を続けています。私も昨年直接届けに行ってきました。

<カメラを渡した後に撮った集合写真>

南アフリカではかつて、アパルトヘイトと呼ばれる人種隔離政策が行われていました。白人以外の人種の政治的・社会的権利を奪い、居住区まで指定した差別的政策です。現在はこの制度は廃止されていますが、貧困の差は開いたままで、多くの人が今もタウンシップ(旧黒人居住区)に暮らしています。

<タウンシップの町は、このような感じです>

アパルトヘイトの時代を生き抜いてきたビクターさんは、十分な教育を受けられないスラム地区に住む子どもたちに「創造する喜びを知ってほしい」と写真を教える活動をしています。「新しいことを学ぶ楽しさを知ってほしい。そうしたら,自分でもっといろいろなことをやってみようと思えるはずだから」と。

写真というのはあくまでもツールで、目的は子どもたちへの教育です。教育を受けられず、経済的にも貧しいと生きていくために非行に走ってしまう、という悲しい現実は少なくありません。そんな負の連鎖を断ち切るためにも、私たちがカメラを届けることで、子どもたちの未来が明るくなる一助になることを願っています。

<ビクターさんのお話を聞いているところ>

2021年12月出航のクルーズではふたたび南アフリカを訪れます

次にピースボートが南アフリカに行くのは来年2021年の12月出航のこちらのコースです。

北半球が冬に当たるので真逆の南半球をぐるっと周っていくコース。なかなか飛行機では行きにくい国々を一気に回っていけますし、北半球とはまたガラッと雰囲気の違う大自然を体感できたり、明るく陽気な人々にも会いに行けるオススメのコースです!

 

ピースボートスタッフ 神野景子