【イベント報告】この京都の片隅で~ある在日の話~

在日コリアンの世界的パフォーマー、ちゃんへん.さんの生い立ちから知る朝鮮のこと、日本のこと

こんにちは!ボランティアスタッフのナルセヨウコです。6月7日、ピースボートセンターおおさかで「この京都の片隅で~ある在日の話~」というイベントがありました。私は、普段から色んな人の講演会や話を聞くのが好きです。特に今回は世界的パフォーマーでピースボート水先案内人のちゃんへん.さんが来てくださるとのことでとても楽しみにしていました。

日本、韓国、北朝鮮で違う歴史のとらえ方

 

ちゃんへん.さんはジャグリングの中でも特にディアボロと呼ばれるコマとスティックを使ったパフォーマンスで世界一にもなっています。 会の冒頭には狭い空間用として特別にいくつかのジャグリングを見せていただきました。ディアボロの見せ場は、コマを高く飛ばすことなのでピーセンの天井が低いことがとても残念ではありましたが、様々な技をとても楽しく見せていただきました。

ちゃんへん.さんは日本と朝鮮半島の歴史について簡単に説明してくれました。日本と韓国、北朝鮮では教科書に書かれていることが違うこと、同じ出来事でも日本から見た歴史と朝鮮半島のそれぞれでは違うものであること、朝鮮戦争や現在の北朝鮮と韓国のことまで、知らなかったことが多くありました。

朝鮮人であることを意識した小学校入学

京都の在日朝鮮人コミュニティー

ちゃんへん.さんは京都府宇治市にあるウトロ地区で生まれ育ちました。ここは在日コリアンの方々が住んでいる地区で、つい最近まで(場所によっては今でも)水道やガスが通っていなかった場所です。私は関西で生まれ育ちましたが、京都にこのような地区があることをこの日まで知らなかったため、衝撃と驚きでいっぱいでした。

ちゃんへん.さんが小学生になり、朝鮮人学校ではなく日本の小学校に通うことになった時、初めて自分が朝鮮人だということを意識したそうです。それまでは周りにいるのは在日朝鮮人ばかりで、朝鮮語で日常生活を送っていました。日本語はテレビの中の言葉であると感じ生活してきたそうです。

いじめと母の言葉

小学校3年生のとき、ちゃんへん.さんは在日朝鮮人であるために上級生からいじめられ、4年生の時には死を考えるまでになりました。 そんなある日、校長先生がいじめを目撃し、その場にいた生徒たちと親が学校に集まりました。

そこで、ちゃんへん.さんのお母さんはいじめている子ども達に怒るのではなく、「素敵な夢を持っている子はいじめをしない」と言いました。学校にいじめより面白いものがないからいじめが起こるんだと。ちゃんへん.さんのお母さんの言葉は、私には衝撃的でありながらも、とても素敵な言葉だと感じました。

「国籍」を取るということが意味するもの

その後ちゃんへん.さんは、ジャグリングと出会いました。のめり込むように練習し、中学生の時にはもっとジャグリングを学びたい、アメリカで学びたいと思うようになります。

でもその想いをお祖母さんに伝えた時、彼女は泣きながら怒って言いました。

 

「国籍を取ることがどういうことかわかるのか?」

 

朝鮮戦争が起こる前から日本に住んでいた人たちの中には今もまだ国籍がない人がごくまれにいます。その理由のひとつが、 戦争前は1つの国だった朝鮮が北と南にわかれたこと。もちろん朝鮮戦争休戦後、国籍取得は可能でしたが、北朝鮮か韓国のどちらかに国籍を決めなければなりません。 これは、朝鮮半島が北と南に別れた事を認めることになる、ということです。

ちゃんへん.さんはこの時、無国籍の状態で、アメリカに行くためには韓国籍を取得しなければなりませんでした。この出来事はちゃんへん.さんにとって人生の大きな大きなターニングポイントとなりました。

今回の勉強会はここまで。ちゃんへん.さんのお話は次回、7月5日の勉強会に続きます。続きは、ぜひ勉強会に参加して、直接ちゃんへん.さんから聞いてください。

ちゃんへん.さんのお話 第二弾「国と国の狭間~911以降311以前~」

ちゃんへん.さんから3回シリーズで学ぶ企画の第2弾。朝鮮半島情勢は、現在、歴史的な南北首脳会談と米朝首脳会談が行われるなど、激しく揺れ動いています。このような動きの背景には、実は日本も深く結びついています。今回は、そんな歴史的な話を交えながら、ちゃんへん.さん自らがアイデンティティを探る旅を続け、世界中でジャグリングをするようになった経緯をお話しいただきます。

・日時 201875日(木)20:00-21:30(開場19:30
・場所 ピースボートセンターおおさか(アクセス)
・参加費 500
・講師 ちゃんへん.さん
・予約 NGOピースボートイベントページより予約をお願いします→こちら

知らないことはこわいこと

日本で生まれ育って戦争にも縁なく過ごしてきた私は、こんな現実がすぐ近くにあることを知らなかったことに、恥ずかしさと悔しさを感じました。また、知らないことは本当に怖いとも思いました。その反面、いろんなことを知りたいという気持ちもより強くなりました。 ついこの間米朝会談が行われましたが、今回ちゃんへん.さんのお話を聞いたことで朝鮮半島のこれからについて見る目が少し変わりました。

私は今年夏に出航する99回地球一周クルーズに乗船します。自分の視野を広げたいと思ってピースボートの船に乗ることを決めました。日本にいても、インターネットやテレビのニュースで色んな情報は入ってきます。しかし、日本で報道されていることは実際に起こっていることの一部分でその裏にはいったい何があるのか、現地の人がどう感じどう考えているのか、ということを知ることはできません。地球一周ではいろんな国を訪れ、現地の人と交流します。私は、地球一周をこれからの自分をつくっていく糧としたいなと思います。

 

文:ナルセヨウコ 編集:森田幸子