みなさん、こんにちは。ピースボートセンターおおさかの野々村修平です。
ピースボート地球一周の船旅が遂に再開しました。実に3年ぶりの出航です。
ピースボート史上最大の客船である77,441トンを誇るパシフィック・ワールド号が、4月7日に横浜港大さん橋客船ターミナル、翌日8日に神戸港ポートターミナルを出航し、108日間の旅路へと帆を上げました。
ここまでピースボートを信じて待ってくださった方々、そしてピースボートの意義を忘れずに船を出すためにまっすぐと進んできたスタッフ・関係者など、たくさんの人の想いを詰めて出航していきました。
当日は過去にご乗船いただいた方や、いつかは乗ってみたいと志すたくさんの方々が港に集まりました。
そして多くのボランティアスタッフも出航の瞬間を目の当たりにしました。
「船って本当にあったんだ」
「これに次は自分たちが乗るんだ」
予想以上に大きな船体を目の前に興奮を隠せないみなさんを見ていて、安堵の気持ちを覚えました。みんなが信じてくれたからこそ、船は出航できます。
神戸港の出航セレモニーでは、若者を代表して大阪のボランティアスタッフがスピーチをしてくれました。
「今から約3年前、自分がどうしたいのか、何がしたいのか生き方に悩んでいました。友だちと遊んでいても、職場で仕事を頑張っていても、どこか居場所がないような感じがしていました。
周りの評価を気にして、顔色を伺い、他人と比べて落ち込む、そんな自分が嫌いでした。
そんな時、世界を見たり、人々の暮らしを見たり、いろんな生き方に触れたら、何か自分の生き方のヒントが見つかるかもしれないと思いました。
もっと自分を好きになりたい。自分を変える一歩として、少しの不安とたくさんの希望を胸に、今日神戸港を出発します」
そのように話してくれました。
私も同じようなことを考えたことがあります。自分が初めて出航したあの日あの時感じた想いを、いままさに彼女は感じようとしてくれています。
出発する瞬間は不安に苛まれる気持ちがあると思いますが、自分を探す旅を彼女はきっと果たしてくれると思っています。
船が少しずつ神戸港を離れていく姿をゆっくりと眺めていました。
私自身、船が出航する瞬間は不思議と感情が穏やかでしたが、自然と涙が溢れ出てきました。「絶対にまた船を出すんだ」という、私のこの3年間の目標が達成できた瞬間でした。
2023年はピースボート創立40周年です。この節目のタイミングで地球一周を再開できたことを誇りに思います。
3年前、誰もコロナウイルスの出現を予想することはできませんでした。日常の生活は瞬く間に奪われ、不安に駆られ、そして海外へと行くこと自体ができなくなるのではないかという焦燥感を覚えました。
いままで当たり前だったことが、通用しなくなる世界といっても過言ではありません。
私たちピースボートスタッフは乗客として一度は地球一周を経験しています。その船旅で感じた想いが、この船出の瞬間まで背中を押し続けてくれました。
ただ船旅の再開を信じ抜く気持ちの半面、どこかで私たち自身も不安を抱えていたことも事実です。
この不安を取り除いてくれたのは、紛れもなく私たちを信じて待っていてくれた方々です。そのような方々には感謝の念に堪えません。
本当にありがとうございます。
ピースボートは、国連との特別協議資格をもつ市民団体です。世界平和と友好をテーマに、船体にはSDGsのロゴマークを記し、「旅が平和を作り、平和が旅を可能にする」というテーマを掲げています。
世界各国を巡り問題や課題を集め、その声を国連で報告するというミッションがあります。ピースボートの船旅はまさに平和への道標とならなければいけません。
今回出航した船には、ウクライナ出身で過去に何度もピースボートクルーズの船長を務めたビクター・アリモフ名誉船長が乗船しています。
ウクライナは、戦争が始まって以来いまも緊迫した状況で生活をしている人々がいます。
地球一周は世界のことを学ぶ大きな機会でもあります。このように分断していく世界を繋ぎとめ、微力ながらもできることを私たちは地球一周の旅路で探さなければなりません。
私たちはここからリスタートします。
船旅は目の前にあり、誰にでも手の届く場所にあります。でも世界一周のチャンスを掴むかどうかは、やはり気持ち次第です。
何が起こるか分からないこの世の中だからこそ、みなさんが船に乗りたいと最初に感じた時の気持ちを大切にしてください。
そして、その時の気持ちを強く持ち続け忘れないでください。
いっしょに世界を見に行きましょう。
ピースボートセンターおおさか 野々村修平