【イベント報告】ピースボート地球大学オープンカレッジ~地球の今を学びながら旅しよう~

地球一周しながら世界のことを学ぶピースボート地球大学をちょこっと体験

こんにちは。ピースボートボランティアスタッフのおりょうこと塚本紋女です。
5月18日に、地球大学プログラムはどのようなものなのか体験してみよう!ということでイベントがおこなわれました。ゲーム感覚で楽しく世界のことを知ることができて、船の上でおこなわれている地球大学を体験することができました。ピースボートスタッフのほっけさん(中田智子)と、赤ちゃん(遠山明子)にお話をしていただきました。

「キャンパスは地球!」ピースボート地球大学

地球大学とは、国際社会への理解を深めグローバルな視点を身につけるためのプログラムです。ピースボートの地球一周クルーズの中でおこなわれていて、洋上ゼミと寄港地での現場体験を合わせ、地球規模の問題を自分の問題として考える視点を養い、理解を深めていきます。

毎回テーマがもうけられていて、たとえばこの夏出航する99回地球一周クルーズで開催される地球大学のテーマは「誰一人取り残さない、持続可能な社会をつくる」です。貧困や紛争、気候変動など地球規模の問題に対して体験的に理解を深め、自分の問題としてとらえる視点、情報発信能力や行動力を身につけます。クルーズ中はほぼ毎日ゼミが開講されており、水先案内人(船に乗船する各界の専門家)による特別な講座もあります。

先入観に気づいた自己紹介

今回の地球大学オープンカレッジは自己紹介からはじまりました。握手をして、名前と最近嬉しかった出来事を言い合うというもので、「3分間でできるだけ多くの人と自己紹介をしてください!」といわれてスタートしました。

みんな一対一で次々と自己紹介をしていきました。自己紹介タイムが終了し、一番多くの人と自己紹介した人は5人でした。みんな一人ずつと順番に話していきましたが、実は一気に全員で自己紹介する手段もあったということを知りました。みんなでひとつの輪を作り、握手をして話すことでもっと多くの方と話すことができたのです。

握手をするし、自己紹介は一対一でするものだと思い込んでいたので、「その手があったか!」と驚きました。自分の先入観に気づき、物事をいろんな視点から考える柔軟な思考が必要だと感じました。

「魔女の宅急便」の舞台が伝える紛争の歴史

そして、99回地球一周クルーズで訪れるクロアチアのドブロブニクについて学びました。ドブロブニクは街中がオレンジ色の屋根で統一された綺麗な街並みで、旧市街は世界遺産に登録されています。ジブリ映画『魔女の宅急便』や『紅の豚』のモデルになったとも言われています。

この街を上から撮った写真を見ると、茶系の古い瓦と鮮やかなオレンジ色の瓦の2種類あることが分かります。実は新しい瓦は、1991年ユーゴスラビア連邦解体過程で異民族間の対立から起こったユーゴ紛争によって壊された瓦が修復された部分です。

この歴史を知らずに現地を訪れると美しい街だけで終わってしまうかもしれません。しかし、今も紛争の爪痕が残っており、この地を訪れた人に何かを伝え続けている世界遺産であるという意識を持って行くと感じるものが変わり、感動も大きくなると思います。地球大学は寄港地に着く前にその国の事を学ぶことができるため、異なった視点で見ることができるかもしれません。

人々の心を紛争に向かわせたプロパガンダ

そして、このユーゴ紛争が起こった原因を学ぶワークショップを行いました。2人一組になり、1人は紙に書かれた内容を指示し、もう1人が実施します。紙には、「相手に自分の大切な人の名前を紙に書いてもらい、その紙をぐちゃぐちゃに丸めて投げてください」と書かれています。

皆さんが、この指示が書かれた紙をもらった時どうしますか?私は投げつけられる側を体験しましたが、紙をぐちゃぐちゃにされた時は私の大切な人を粗末に扱われている気がして複雑な気持ちになりました。でも相手の子は指示されてその行動を起こしたので悪気はないし、ただ紙をぐちゃぐちゃにするという行為にそこまで罪悪感は感じていない様子でした。

ワークショップでは全ての人が指示に従い行動しました。紙をぐちゃぐちゃにするのは心が痛かったが、みんなやっていたし、指示が書かれていたから実施したという意見がありました。指示に逆らい、やらないという選択肢もありますが、自分だけ違う行動をとるのは勇気がいることだと思います。

88回クルーズ(2015年)で開催した地球大学ではドブロブニクを訪れて現地の方から話を聞いた。

ユーゴ紛争では、敵対する民族の残酷性や殺し合うことの正当性がテレビやラジオなどでアピールされました。このような、特定の思想・世論・意識・行動へ誘導する意図を持った行為を「プロパガンダ」と言います。ユーゴ紛争の始まりにはプロパガンダが大きく関係し、社会全体が戦争賛成、戦おう、殺そうという方向に進んでいったのです。

今回のワークショップがもしも人を殺せという指示であれば、「まさかやらないでしょ」と思うかもしれません。しかし、実際にユーゴ紛争では政府やメディアの発信の仕方によって、人々の“常識”は変化し、「まさかやらない」と思う戦いが8年間続いたのです。

さらに深みのある地球一周を

せっかくの地球一周、船で思いっきり楽しみたいのに勉強なんて…と思っている方もいると思います。しかし、世界の歴史や現状を自分の目で見て、体験し、考えることでさらに深みのある地球一周になるのではないかと思います。

私は、ボランティアスタッフをしながら地球一周を目指しています。ピースボートセンターで行われるイベントや勉強会に参加していると、新しい発見があって地球一周がもっと楽しみになります!たくさんの人と出会い、知らなかったこと、新しい価値観に触れる地球一周にしたいです。

 

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文:塚本紋女 編集:森田幸子